2010年8月3日火曜日

路頭に迷うWindowsユーザー・・・メール・クライアントとアドレス帳について

Windows 7のアドレス帳はどこにある?

この4月に、Windows 7をインストール済みのノートPCを買った。ところが何と、これには、日常最もよく使うメール・クライアントが付いてない。従来使っていた、Windows XPにはOutlook Express、Windows VistaにはWindows Mailというメール・クライアントが付いていたが、Windows 7にはない。一体どうなっているんだ?

マイクロソフトの公式見解によると、下記二つの選択肢があるという。(1)

(a) 他社のメール・クライアントを使う。(Thunderbirdなどにどうぞ移行して下さい、ということのようだ)

(b) Windows Live Mailという無料ソフトをダウンロードして使う。これを使えば、アドレス帳がサーバー側にあり、Windows Liveで自動的に更新されるので、常に最新のものが使えるという。そして、Windows Liveに接続してなくても、このアドレス帳が使えるという。

小生は、ずっとNetscape系のメール・クライアントを使ってきて、2007年にマイクロソフト系に切り替えた。マイクロソフト系のメール・クライアントには「悪い製品がよい製品を駆逐?」(2) で指摘したように問題が多く、現在も不便さを耐え忍びながら使っている。しかし、今回は、操作やファイルの連続性を重視して、上記の選択肢(b)のWindows Live Mailを使うことにした。

小生はWindows Liveの機能は使う気がないので、Windows Liveのサーバーに接続したことはないが、マイクロソフトが言っているように、Windows Live MailはWindows Liveのサーバーに接続しなくてもメールの送受信ができる。また、従来使っていたアドレス帳からのインポートや更新もできる。こうして、小生は現在Windows Live Mailを、アドレス帳も含めて、単なるメール・クライアントとして使っている。

Windows Liveのサーバーに接続しなくてもアドレス帳が使えるということは、アドレス帳がパソコンのディスク内にもあるということだ。しかし、不思議なことに、これがどこにあるのか捜しても見つからなかった。ウェブ情報を調べたところ、同じ疑問を持った人が大勢いるようで、掲示板に質問が多数掲載されている。その回答の一つで、アプリケーション・プログラムのユーザー用データを格納するフォルダに、特殊なファイル形式で格納してあることが分かった。そのため、ユーザーはこのファイルを直接変更したり、移動したりすることはできないようだ。

何が問題か?

こうして、小生は今のところ支障なくメールの送受信をしているが、今回のマイクロソフトのメール・クライアントとアドレス帳の扱いには下記のような問題がある。

(a) 旧バージョンの機能は引き継ぐべき!

ソフトウェア・ハウスにはサポートの連続性が要求される。旧バージョンでサポートしてきた機能は新バージョンでもサポートするべきだ。事情があって旧バージョンの機能を廃止するときは、少なくとも1世代は新しい代替機能との並行サポートが必要だ。新旧両バージョンを一時期同時に使用する人も多いので、これは不可欠だ。零細ソフトハウスならいざ知らず、マイクロソフトのように実質上市場を制している企業にとっては、これは社会的責任である。

この点で、Windows 7でのメール・クライアントとアドレス帳の扱いには問題がある。

(b) メール・クライアントはSaaSにはなじまない!

現在世界中で「クラウド」が大流行で、その中心の一つは、ソフトのパッケージ販売から、SaaSとしてのサービスの提供への変化だ。パッケージ販売が中心だったマイクロソフトも、この流れに乗り遅れては大変と、SaaS型サービスの提供であるWidows Liveの世界を急速に充実させようとしているのは理解できる。

同社は、従来パッケージソフトとしてOSに括り付けて提供していた写真や動画の編集ソフトを、Windows 7ではSaaSにして、Widows Liveの世界に追い出してしまった。しかし、たとえこれらはいいとしても、メール・クライアントまでWidows Liveにしてしまったのは問題だ。

メール・クライアントとはメール・サーバーが提供するサービスに対応するクライアント側のソフトだ。したがって、メール・クライアント自身をSaaSにするということはあり得ない。Windows Live Mailもメール・クライアントとしての機能そのものは、前身のWindows Mailと基本的に同じである。変わったのは、従来クライアント側にあったアドレス帳のWindows Contactsがサーバー側に移り、Windows Live Contactsに変わっただけだ。したがって、メール・クライアント自身をWindows Liveの一員に移したのは適切とは言えない。

(c) アドレス帳はクライアント側にも必要!

では、アドレス帳をWindows Liveに移し、サービスとして提供するようにしたのはどうだろうか? もちろん、企業などでは、各個人が自分のアドレス帳を管理するよりも、企業全体で統一された最新のアドレス帳を各個人がサービスとして使える方が便利だ。また、いわゆる「デレクトリ・サービス」や「ソーシャル・ネットワーク」で、加入者全員の最新のメール・アドレスが調べられることは、人捜しなどのときに便利である。

しかし、個人用のアドレス帳は、大変重要で機密性の高い情報なので、外部での管理にゆだねたくない人も多いはずだ。外部に出せば、機密漏えいのリスク、情報喪失のリスクを免れないからだ。

したがって、サーバー側で管理するアドレス帳の意義は分かるが、それとは別に、クライアント側で管理するアドレス帳が是非とも必要である。

(d) 長期的戦略が必要!

マイクロソフトは近年、メール・クライアントを、Windows XP以前のOutlook Express、Windows VistaのWindows Mail、Windows 7のWindows Live Mailと、世代ごとに切り替えてきた。また、これに対応してアドレス帳も、Windows Address Book、Windows Contacts、Windows Live Contactsと切り替えてきた。そして、現在のものには上記のように大きな問題がある。と言うことは、次期バージョンでまた変わる可能性があると思われる。

いくら変わろうと、過去の遺産を重視しつつ、一定の方向に向かって進化するのなら一向に構わない。しかし、現状はまったく方向性が見えず、しかも、しばしば顧客ニーズに逆行しているように見える。これではOSのバージョンアップのたびにユーザーは振り回されてしまって、たまったものではない。

(1) “Looking for Windows Address Book”, Microsoft

(2) 「悪い製品がよい製品を駆逐?」、OHM、2008年1月号、オーム社

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