2011年4月29日金曜日

「電子書籍の勝者は?」のご紹介


オーム社の「OHM」20114月号に掲載された上記記事を小生が運営するウェブサイトに再録しました。
[概要] 昨年12月ソニーとシャープが電子書籍を発売し、いよいよ日本でも電子書籍の商戦が本格的に始まった。グーグルも日本でも年内に提供を始めるという。しかし、現状はどの電子書籍も問題を抱えているようだ。本命に近いのはどれなのだろうか?  ―――>全文を読む

2011年4月13日水曜日

別地保管のすすめ


東日本大震災の教訓

今回の東日本大震災は、人々が想定していた自然災害の規模をはるかに超えるものだった。そのため、学ぶべき教訓は枚挙にいとまがない。その一つに、IT関連では「データ消失」がある。

320日の読売新聞によると、宮城県南三陸町の戸籍の全データが津波で消失した可能性が高いという。データは仙台法務局の気仙沼支局にも保存してあったが、同支局も津波で水没したため、南三陸町の戸籍データは完全に消滅した可能性が高いということだ。そのため、戸籍謄本や抄本を発行できなくなる恐れがあるという。

また、48日の日経新聞は、地元企業や商店のパソコンが津波の水をかぶり、商売に必要なデータが使えなくなった事例を紹介していた。この事例では、幸いハードディスクからデータを復元できたというが、運が悪ければ復元できなかった可能性もある。

パソコンのデータには、常にデータ消失のリスクがある。ハードディスクは読めなくなる可能性があるし、操作ミスで重要なデータを消してしまう恐れもある。そのため、定期的にファイルのバックアップを取って、これらの事故に備えている。しかし、火災や津波による被害に対しては、同じ場所にバックアップを取っておいても役に立たない。そこで、大企業や官庁などの大組織のデータセンターでは、別地にバックアップ・ファイルを保管している。

しかし、何事にもパソコンを活用するようになった現在、データが消失して困るのは大組織とは限らない。小企業や商店、地方の小さい自治体も同様に困ることを前記の記事は示している。いや、それどころか、個人でも大変困っている人がいるだろう。個人事業の売上・損益のデータや顧客ファイル、何ヶ月もかけて執筆中の原稿などが、ある日突然消えてなくなったら困る。仕事と関係がなくても、住所録や写真のアルバムなどがなくなったら、カネを出しても買い戻せない。運がよければディスクから復元できる可能性があるが、確実性は高くない。今やデータの別地保管が必要なのは大組織だけではない。

別地保管が手軽に

従来、データの別地保管といえば、大組織のデータセンターについての大がかりな話だった。中には定期的に山のような磁気テープをトラックで遠隔地に運んでいたところもあった。そのため別地保管は、金額的にも小企業や個人が手を出せるものではなかった。

ところが最近、インターネットを使って、いとも簡単に大量のデータを遠隔地に送れるようになった。そして、大容量のディスクを備えたサーバーを回線経由で貸す、レンタル・サーバー事業者が多数出現している。

最も普及しているのは、ウェブ・サーバーやメール・サーバー用に、数GBから数十GBのストレージ付きのサーバーを、月当たり数百円から数千円で貸すものだ。これは本来ウェブ用のデータを格納するものだが、契約した容量内なら何を保管しても構わない。すでにウェブ・サーバーを使っていれば、空きエリアを使うだけなので、容量の制約があるが追加費用は発生しない。

また、現在流行のクラウドの一種のIaaS (Infrastructure as a Service)で、ディスク・ストレージをインターネット経由で貸すものもある。たとえば、アマゾンのS3 (Simple Storage Service)というサービスは、1GB当たり0.14ドル/月でストレージを貸すものだ。

こういうサービスを利用すれば、小企業や個人でもデータの別地保管が簡単に実現できる。

フォルダー名は英語で

小生は今まで、自宅内でバックアップ・ファイルを保管していただけで、別地には保管してなかった。幸い津波の恐れはないところに住んでいるのだが、もし火事で全焼したら、これではまったく役に立たない。そこで、ウェブとメール用に使っているレンタル・サーバーの空きエリアに、個人用の重要なファイルのバックアップを保管しておくことを試してみた。

バックアップ・ファイルの取得や、それを使っての復元は問題なくできた。ただ、一つだけ困った問題に遭遇した。

小生は、フォルダー名に原則として英語を使っているのだが、一部日本語を使ったものもある。また、日本のソフト会社のソフトには、ユーザー・データのフォルダー名に日本語を使っているものがある。Windows系の世界ではこれで何ら支障ない。しかし、ウェブやメールに使われている多くのサーバーはUNIX系で、WindowsのフォルダーはUNIXではディレクトリになるが、UNIXではディレクトリ名に日本語は使えない。

そのため、上記のような簡便な別地保管のためには、フォルダー名は英語(またはローマ字)にしておく必要がある。日本のソフト・ベンダーにもこれを頼みたい。日本マイクロソフトはWindowsの一部のフォルダー名をわざわざ英語から日本語に変換しているが、上記のような使い方をするとき障害になるので是非止めてもらいたい。