2009年11月28日土曜日

「Facebookに加入して」のご紹介

ソーシャル・ネットワーク・サービスのFacebookの利用者が世界最大になったというので、米国のFacebookに加入してみた。利用者には年配者やプロの画家などが多く、商売に利用している人が多い。個人事業者の仕事の仕方に変化をもたらしているようだ。
(「OHM」2009年11月号掲載)

全文は下記をご覧下さい。
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2009年11月25日水曜日

何とかならぬか、固定電話

ディジタルーアナログーディジタル変換

我が家の電話機が壊れたので、しかたなく買い換えた。固定電話の世界でもIP電話などの新しい技術が現れているので、少しは新しい電話機が現れているのではないかと思ったが、基本的には従来とまったく同じようなものしか売ってないのでいささか驚いた。固定電話は最近のネットワークや携帯電話の進歩から取り残されているようだ。ここでは4点を取りあげる。

最近、固定電話に光回線を使ったIP電話が増えている。そこを流れる音声はディジタル化された信号だ。また、コードレス電話の親機と子機の間の通信も、最近はディジタル化されている。今回買い換えたものもディジタルのコードレス電話で、子機の音声の品質は格段によくなった。

ところが光ファイバの終端装置から固定電話の親機までの間は、従来の電話と同じアナログ信号だ。光終端装置でディジタル信号をアナログに変換し、それを受け取った電話機で再度ディジタルに変換するというバカバカしいことをやっている。これでは部品が増える上に音声の品質が落ちる。

電話の基幹回線にも、コードレス電話にも、サンプリング周波数8kbpsのPCM(パルス符号変調)が使われている。量子化ビット数は基幹回線では8ビット、コードレス電話では4ビットと異なるが、同じ変調方式なので、基幹回線のディジタル信号をコードレス電話のディジタル信号へ直接変換すれば簡単にできるはずだ。

もちろん、IP電話に切り替えても、壁に埋め込まれた屋内配線をいじりたくない人もいるだろう。したがって、従来のアナログ入力の電話機がまだあるのは、ごく自然なことだ。しかし、家を新築し、電話回線も電話機も新設する人にとっては、こういう製品しか選択できないのはいかにも不便だ。

一つの家庭に無線ネットワークが二つ

最近は無線LANで家族のパソコンを相互に接続している人が多い。インターネット接続の回線を共用したり、ファイルを交換し合ったりしている。そして、ビデオゲーム機などもこの無線LANを介してインターネットに接続し、ソフトを更新したり、ウェブを閲覧したりできる。「ホームネットワーク」の時代の到来である。

一方、コードレス電話も家庭内の無線ネットワークで、親機と子機の間とか子機同士で通話することができる。つまり、家庭内に無線ネットワークが二つ存在することになる。

電話にも無線LANを使ってこれらを一つに統合できれば、無線ネットワークが一つで済む。その技術は、デュアルモードの携帯電話ですでに実用になっている。例えば、NTTドコモの「PASSAGE DUPLE(パッセージ・デュプレ)」では、1台の携帯電話機で携帯電話回線と無線LANのいずれからでも電話をかけられる。

コードレスの子機と携帯電話がゴロゴロ

コードレス電話の子機をいくつかの部屋に設置している家庭が多いだろう。一方、家族がそれぞれ携帯電話を持っている家も多い。コードレスの子機も携帯電話機も、スピーカーとマイク、電話番号を入力するボタンやそれを表示する液晶画面、電話帳の機能などを備えている。似たようなものが家じゅうにゴロゴロある。この二つが一つになれば便利なことが多いはずだ。

両者で最も違うのは回線の接続回路だ。しかし、もし前記のように、コードレス電話にも無線LANが使われるようになれば、無線LANと携帯電話回線と両方が使える電話機はすでにあるので、この問題は解決される。現在のデュアルモードの携帯電話は、携帯電話の接続に携帯電話回線と無線LANとを使い分けるものだが、この無線LANを固定電話の接続にも使えるようにすればいいわけだ。

アドレス帳が氾濫

パソコンのメール・クライアント、宛名印刷ソフト、固定電話、携帯電話などにアドレス帳とか住所録とかいう機能がある。登録する内容には共通なものが多いが、従来はファイル形式が違ったため、それぞれ個別に登録する必要があった。この問題は、「アドレス帳が一つになる日」という題で5年前にオーム社の雑誌に書いたことがあり(注1)、そういう日が来ることを待ち望んでいた。

その後多少進歩し、最近ではメール・クライアントで使われるアドレス帳は、他社製品との間でもデータが交換できるようになった。それはvCardという標準ファイル形式が普及したからだ。このvCardはiPhoneにも使われていて、iPhoneではパソコンと携帯電話でアドレス帳を共通に管理できるようになっている。

我が家で今まで使っていた電話機では、数字ボタンを使って電話帳を新規に入力する必要があったが、今回買い換えた電話機では、電話機を使わなくてもパソコンで電話帳を作成できるようになっていて、少しは改善されていた。しかし、他の製品のアドレス帳、住所録の類とのデータの交換はできない。いや、他社製品どころか、同じメーカーの電話機の間でもどこまで共通に使えるのか不明だ。

一歩前進したが、「アドレス帳が一つになる日」はまだまだ遠いようだ。

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もちろん、ここに書いたような問題がすぐに解決されるとは思わない。しかし、今回買い換えた電話機を見る限り、そういう方向へ進もうとする気配さえ感じられないのは非常に残念だ。固定電話は需要が減っていて、メーカーとしても力が入らないのは分かる。しかし固定電話は、数は減ってもなくなることはない。携帯電話やコードレス電話と統合して新しい電話の世界が切り開かれることを望みたい。それには、固定電話と携帯電話を一体の事業として推進する体制が必要だと思う。

(注1) 「アドレス帳が一つになる日」、「Computer & Network LAN」、2004年10月号、オーム社(http://www.toskyworld.com/archive/2004/0410addressbook.htm)

2009年11月17日火曜日

ネーミングを間違えた「iPhone」?

名は体を表さないiPhone

最近のスマートフォンで何ができるだろうか? iPhoneを例にとって想像してみよう。

iPhoneの最初のホーム画面には20個のアイコンを並べることができ、20個の機能を登録できる。その中に、しょっちゅう使うウェブサイトを含めてもよい。この機能を1日の生活に生かすとどうなるだろうか? 以下の「 」内はホーム画面に登録されている機能である。

出張先のホテルで、朝「時計」のアラーム機能で目を覚ます。まず「カレンダー」の予定表でその日の予定を確認する。登録してある「XX新聞」でニュースを読み、米国の「株価サイト」で米企業の株価の終値をチェックする。

「マップ」で、始めて訪問する客先への経路を調べ、指定された駅で下車する。GPSと方位センサによって、現地の方角に合わせて地図が表示されるので、示された経路に従って歩いていくと客先に着く。これなら《地図が読めない女》でも問題ない。

客との商談を「ボイスメモ」に録音しておく。また、「メモ」に話の要点を記入しておく。商談で出た金額は「計算機」、つまり電卓機能で確認する。商談後の雑談時に、初対面の相手に「写真」のアルバムで家族を紹介する。顔を忘れないよう「写真」のカメラで相手の写真を撮らしてもらう。

昼になったので、「マップ」で近所のレストランを捜して昼食。料理が来るまでの間に「メール」で受信メールを読み、「株価」で株の現在値をチェック。「iPod」で音楽を聞きながら食後のコーヒーを飲み、登録してある「SNSサイト」でネット友達の様子を見てみる。

その時、電話の着信音がなる。『あっ、iPhoneは電話にも使えるんだった!』

これは極端な例かもしれない。しかし、20個のアイコンが並んでいるiPhoneの最初のホーム画面で、「電話」は左下隅の1アイコンに過ぎない。iPhoneのネーミングは《名は体を表さず》だ。

上に挙げた例の他、iPhoneを電子ブック・リーダとして愛用している人もいるだろう。また、もっぱら家計簿の管理に使っている主婦もいるだろう。そして、外部機器との組み合わせで実現する機能もある。iPhoneには、運動靴に付けた加速度センサの情報をキャッチして、ランニングやウォーキングの距離や時間を計測し、カロリー消費量を管理する機能もある。この類の製品も今後増えるだろう。

「スマートフォン」が死語に!?

これは何もiPhoneに限った話ではない。他のスマートフォンも同じだ。ということは、「スマートフォン」という名前自体が「名は体を表してない」のだ。「PDA (Personal Digital Assist)」が死語になり、スマートフォンがその市場を引き継いだが、そのスマートフォンも遠からず死語になるのではなかろうか?

現在のスマートフォンには新しい名前が必要だ。「複合携帯端末」とか「常時生活サポート端末」とかいうような意味合いなので、それにふさわしいスマートな名前が望まれる。

スマートフォンの主役は誰に?

携帯電話は無線通信事業者によって始められた。しかし、スマートフォンの開発やそれに関連するサービスの提供は、通信インフラの提供とはまったく性格が違う。通信インフラ事業にとっては、通信速度、信頼性、提供エリアなどが重要なファクターだ。一方、スマートフォンにとっては、メインフレームやパソコン同様、アプリケーション・ソフトの機能や品揃えが競合上最も重要だ。

そのため、スマートフォンのビジネスにはアップル、マイクロソフト、グーグルなど、通信事業とは関係のなかった企業が多数参入している。

通信事業者にとっては、スマートフォンに使われる通信インフラを提供する道を選ぶか、自社でスマートフォンを提供する道を選ぶかを明確にする必要がある。前者なら多数のスマートフォンを扱っても一向に構わない。しかし、後者の道を選ぶなら、OSを一つに絞り、自社独自のアプリケーション・インターフェースを定め、そのアプリケーション・ソフトの流通システムを構築する必要がある。

もちろん、一社で両事業を手がけても構わないが、両事業はまったく性格が違うということを忘れてはならない。

2009年11月12日木曜日

PHSはどうなる?

ウィルコムが苦境に!

PHSのサービスを提供しているウィルコムが、今年8月に社長の交代を発表し、9月24日には、私的整理の一種である事業再生ADRの手続を申請して受理された。詳しいことはよく分からないが、要するに、借入金の弁済を一時停止し、その後弁済計画を見直させてもらいたいということのようだ。現在は債務の免除や株式化(Debt-Equity Swap)は考えてないというが、何らか方法で債務負担の軽減が必要になったのだろう。

ウィルコムは現在次世代PHSを推進中だが、その展開が遅れている。今年10月から、東京、大阪、名古屋で正式サービスを始める予定だったが、10月に始まったのは、東京の山手線内の一部で、400台の端末を無料で貸し出すだけだ。これでは正式サービスとはとても言えない。

この計画の遅れが今回の人事異動や事業再生ADRの理由なのだろう。しかし、これだけで問題が解決するわけではなさそうだ。10月30日に発表されたウィルコムの事業計画では、2012年度末には人口カバー率を91%にする予定だが、そのためには2012年までに累計1,113億円の設備投資が必要だという。そして、その資金調達が何とかなったとしてもPHS自身の問題がある。

PHSの問題は?

PHSの将来性については5年前に「OHM」に書いた。(注1) PHSは、かつては簡便な携帯電話としてかなり普及したが、データ通信の比重が大きくなると、どうしても通信速度の面で一般の携帯電話に太刀打ちできない。そして、PHSが特長としていたデータ通信の定額サービスは一般の携帯電話でも行われるようになる。

ウィルコムは通信速度等の改善のため「次世代PHS」を開発した。しかし、それに使われている技術はほとんどLTEと呼ばれる第4世代の携帯電話と共通だ。次世代PHSも標準規格としてITU(国際電気通信連合)に承認されたが、LTEと似て非なる規格が世界的に普及する可能性はまずないだろう。

PHSは一時中国で1億人近くの人に使われていたので、国際標準の一つになると唱える人もいた。しかし、前掲の記事に書いたように、中国でPHSが一時大流行したのは中国の特殊事情のためで、それがいつまで続くかははなはだ疑問だった。

案の定、中国では2008年に通信業界が再編され、第3世代の携帯電話の分担も決まり、PHSは2011年でサービスを終了することになった。2006年に1億人に近かった加入者は、その後減り続け、この9月には5,300万人になったという。

ガラパゴス化に手を貸す総務省?

次世代PHSを始めたのはウィルコムだが、NTTドコモなどの競争者を排除してウィルコムに電波の免許を交付したのは総務省だ。その問題点についてもかつて「OHM」誌上で指摘した。(注2) 総務省はPHSの生みの親なので、他の通信方式との平等な比較を総務省に期待するのは困難なのだ。しかし、もし次世代PHSが失敗に終われば、総務省は責任の一半を免れない。

ウィルコムの最大の株主は投資ファンドのカーライルで、現在60%を保有している。投資ファンドは、将来に期待が持てなくなれば早期に手を引くことを考えるだろう。そのあとを引き受ける者は果たして現れるだろうか? 

ガラパゴス島の絶滅危惧種がまた一つ増えることにならないよう祈るばかりである。

(注1)「PHSに将来はあるか?」、技術総合誌「OHM」2005年1月号、オーム社
(http://www.toskyworld.com/archive/2005/0501phs.htm)


(注2)「ガラパゴス脱出なるか?・・・次世代PHS」、技術総合誌「OHM」2008年3月号、オーム社
(http://www.toskyworld.com/archive/2008/ar0803ohm.htm


[後記]

 その後のPHSの状況については下記をご参照下さい。 (12/7/10)
   『小霊通(シャオリントン、中国版PHS)』のその後」(12/7/9)

2009年11月9日月曜日

電子申請の無残な実態

全体の2割が利用率1%未満!

11月8日の朝日新聞の1面トップに、「国の電子申請 非効率」という見出しで、国への行政手続きをインターネットで行う電子申請の実態を同紙が調査した結果が掲載されていた。それによると、総申請数に対する電子申請の利用率が10%未満のものが全64システム中3割あり、1%未満のものが2割弱あったという。

原因は使い勝手の悪さ!

同紙は使い勝手の悪さがその主原因だという。設定画面をクリックすると、いきなり米国のサイトに切り替わり、必要なソフトをダウンロードしろというが、10以上あってどれを選べばいいのか分からない、という例を挙げている。確かに、必要なソフトはXXのバージョンXX以上などと言われても一般には戸惑う人が多いだろう。

また、「電子認証」を必要とするものが多く、それを入手するにはカネと手間がかかるためもあるという。筆者は、所得税の電子申告をしようとしたときの経験を「OHM」に書いた。(注1) 電子申告では住民基本台帳の「住基カード」が必要で、それを読むためのリーダも必要だが、所得税の申告のためにわざわざ住基カードを取得する人がどれだけいるだろうか?

筆者は最近住民票を取りに役所に行ったが、住民票などを発行する自動機は住基カードの他、もっと簡単な自動交付機用カードも印鑑証明のカードも使えるようになっていた。住基カードの必要性は最近ますます減っているようだ。

なぜこんな事態に?

本記事は、電子化を急ぎすぎたことがこういう事態を招いたという。「甘い査定でも何でも予算化できた」と言っている元担当者がいるという。また、入札用の仕様書を「下書きしてほしい」と頼まれたIT業者もいるという。こうして、2003年度以降、開発と運営に2,300億円以上かけて、利用率が極めて悪いシステムが作られたという。

民間企業では考えられないようなシステム開発がなぜ政府で行われたのだろうか? システムの仕様はユーザーやオペレータの立場でレビューし検証するのが常識である。肝心な箇所はプロトタイプを作って操作し、実際に問題がないか確認する。

「ユーザーの立場で」というのは「国民目線で」ということだ。国民目線で政府や官僚が政治を行っているかどうかを監視するのは野党やメディアの仕事だ。したがって、本件についての追求をおろそかにした前野党の民主党や日本のメディアの責任は否定できない。

いまや与党になった民主党には、過去を反省して早急に改善を図ってもらいたいし、野党になった自民党にはユーザーの目での監視を怠らないでもらいたい。そして、他の報道機関のことは知らないが、遅れ馳せながらも、今回の朝日新聞の報道は評価に値すると思う。しかし、これは1回の報道で済む問題ではないので、継続的に力を入れてもらいたい。

そして、何よりも問題は官僚である。失敗は評価に反映される、しかし、失敗を早期にリカバーすれば、それも評価されるのが民間企業の常識だ。失敗を認めず、改善も図らなければ民間企業では追い出される。しかし、従来の官僚は違うようだ。民主党内閣は官僚の人事評価を見直しているようなので今後に期待したい。

(注1) 「これでいいのか? 日本の電子政府」、技術総合誌「OHM」2007年6月号、オーム社
(http://www.toskyworld.com/archive/2007/ar0706ohm.htm)

2009年11月8日日曜日

Winny裁判の行方は?

逆転無罪・・・しかし検察が上告!

Winnyというファイル交換ソフトの開発者が著作権法違反の幇助罪で逮捕され、2006年12月に京都地裁は罰金150万円の有罪判決を下した。本判決の妥当性については多くの疑問が呈されたが、筆者も「OHM」のコラムで問題点を指摘した。(注1)

本件について今年10月8日、大阪高裁は一審の判決を覆し、一転して無罪を言い渡した。京都地裁は、たとえ技術自身は中立的なものであっても、それが悪用される恐れがあることを開発者が認識していれば罪に問えるという考えだった。それに対し大阪高裁は、違法な使い方を積極的に進めない限り、中立的な技術の開発だけでは罪にはならないと判断した。

この大阪高裁の判決を不服として、大阪高検は10月21日、本件を最高裁に上告した。今後本件は最高裁で争われることになる。

なぜ無罪が望ましいか?

多くのソフト開発の関係者は、本件の有罪判決はソフトの開発者を萎縮させると主張している。確かにその恐れも大きい。それと同時に、筆者は本件の有罪判決が海外から驚きの目で見られていることを前記のコラムに記した。技術的に中立なソフトの開発だけで有罪となった例は海外にはないようだ。

現在、ビジネス環境の国際的な統一を達成し、日本市場を広く海外企業に開放することが求められている。そういう状況の下で、「日本は世界の常識が通用しない、地球上の片田舎だと言われないようにしなければならない」と前記のコラムに書いた。最高裁は本上告を棄却することが望ましい。

(注1)「Winny裁判の教訓」、 「OHM」2007年4月号、オーム社
(http://www.toskyworld.com/archive/2007/ar0704ohm.htm)

2009年11月7日土曜日

「いつか来た道」のその後

5種類のOSで97%

10月9日の日経新聞の「ウィンドウズ7」の記事に、2008年のスマートフォンの世界販売台数のOS別シェアが掲載されていた。それによると、Symbian OS、BlackBerry OS、Windows Mobile、iPhone OS、Linuxの5種類のOSが全体の約97%を占めたという。

この統計は筆者にとって感慨深いものだった。というのは、ある雑誌の2005年1月号に、「今後は携帯電話の世界でも、CPU、OSなどの構成品ごとの水平分業が進み、そうなれば、その専業ベンダによる寡占化が進む。これはかつてメインフレームやパソコンが歩んできた『いつか来た道』で、携帯電話も機能が複雑になれば同じ道を歩むことになるだろう」という趣旨のコラムを書いたからだ。(注1)

この統計はスマートフォンの世界でOSの寡占化が進みつつあることを示している。ではこの寡占の世界での競合メンバーは今後どうなるだろうか?

今後の競合メンバーは?

スマートフォン用のOSとして、2008年にはグーグルのAndroidが戦列に加わり、2009年にはパームのPalm Preで使われるwebOSも現れた。一見競合ベンダが増えているように見えるが、中長期的にはやはり寡占化がさらに進むと思われる。

というのは、前記のコラムにも記したように、OSのようなソフト製品の世界では、「強いところはますます強く、弱いところはますます弱く」なる流れを止めることができないからだ。では、今後の勝敗の決め手は何だろうか?

今後の勝者の決め手は?

メインフレームやパソコンの世界ではアプリケーション・ソフトの品質と品揃えがOS間の勝敗の最大の決め手だった。OS自身の良否は二の次だった。これはスマートフォンについても変わらないだろう。ユーザーが直接使いたいのはアプリケーション・ソフトであってOSではないからだ。OSはアプリケーションを動かすための道具に過ぎない。

次に重要なのは、スマートフォンに特有の要件として、アプリケーションの配布システムがあるのではないだろうか? メインフレームやパソコンでは、一般的にユーザーがある程度の知識を持っているので、ユーザーが自分で必要なソフトを選択し、ベンダから直接購入して使用した。しかし、スマートフォンのユーザーにこういう期待は困難だろう。その上品質に対する要求はある意味でパソコン以上だ。

そのためOSのベンダがアプリケーションの配布システムに力を入れている。アップルはiPhone OS用にApp Storeを開設し、グーグルはAndroid Marketを開いた。そしてマイクロソフトもこの10月にWindows Marketplace for Mobileを開いてこれらに続いた。スマートフォンの世界では、たとえ製品はよくても、こういうアプリケーション・ソフトの流通機構が整備されてないと勝ち残れないのではないだろうか?

(注1) 「いつか来た道-携帯電話のプラットフォームはどうなる?」、「Computer & Network LAN」2005年1月号、オーム社(http://www.toskyworld.com/archive/2005/0501itsukakitamichi.htm)

「通信事業者 vs. ケーブルテレビ会社・・・トリプルプレイの勝者は?」のご紹介

電話、テレビ配信、インターネット接続をまとめて提供する「トリプルプレイ」の時代がやってきた。そこでは通信事業者とケーブルテレビ会社がもろに競合することになる。その勝者はどうなる?・・・事業規模、資金力などから明らかだ。しかし、もしNTTが3サービスを独占することになったら市場の活性化は望めない。ではどうするべきか?・・・フランスの事例も紹介して提案。
(「OHM」2009年10月号掲載)

全文は下記をご覧下さい。
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PDF: http://www.toskyworld.com/archive/2009/ar0910ohm.pdf

2009年11月6日金曜日

新"Tosky's IT Review" 発刊!

筆者は"Tosky's IT Review" (www.toskyworld.com/itreview)という不定期刊行物を、2004年から筆者が運営するウェブサイト"Tosky World" (http://www.toskyworld.com/)で発行してきました。しかし、同様の内容の記事をオーム社の雑誌「OHM」にも毎月執筆していたため、雑誌掲載記事に力を注ぐことにし、"Tosky's IT Review"は2008年5月を最後に休刊状態が続いていました。

今回この"Tosky's IT Review"をブログの形で再開することにしました。従来は1件がA4 2ページにちょうど収まるようにしていましたが、今後は文字数にはこだわらずに、タイムリーにトピックを取り上げたいと思います。また、従来は一般のウェブの性格上一方的な情報発信でしたが、今後はブログの特長を生かし双方向の意見交換を歓迎します。

また、オーム社の技術総合誌「OHM」などの掲載記事を約1ヶ月遅れで筆者のウェブサイトの"Tosky's Archive" (www.toskyworld.com/archive)に再録していますが、その概略内容もこのブログで紹介しますので、ご意見など頂ければ幸いです。