2010年4月7日水曜日

「グーグル対中国」の報道への疑問

“google.cn”はどうなった?

本ブログの「グーグルと中国の対決はどこへ?」 (2010/3/13)に、グーグルが今年1月12日に検索結果の自主検閲をやめると発表したことを記した。本件はその後どうなったのだろうか?

一般の報道では、自主検閲をやめるとの意向を表明しただけで、検閲を中止し、天安門事件などにからむ用語の検索結果を表示するようにしたとは伝えられていない。しかし、上記のブログに記したように、3月13日には “google.cn”で “Tank Man”の検索ができたので、少なくとも一時期は自主検閲が撤廃されていたようだ。

その後3月22日に、グーグルは “google.cn”の訪問者を香港のサイト “google.com.hk” にリダイレクトすると発表した。これは中国の法規制に触れることなく、実質的に中国本土から検閲なしで検索ができるようにするものだ。 “google.cn” で直接検索できるようにすると違法行為とみなされ、いくら国際世論のバックアップがあっても、グーグルが処罰される恐れがある。そのため、グーグルは中国本土と法規制が異なる香港にリダイレクトするという手段を取ったのだろう。

これに対し、中国政府がどう対処するかが注目された。Wikipediaの “List of websites blocked in the People’s Republic of China” の履歴によると、 従来ブロックされていなかった “google.cn”がブロックされたと、3月28日に書き換えられた。そして、3月30日には北京や深圳で “google.cn”も “google.com”も使えなくなったとのブログ情報もある。また、4月1日の日経新聞は、「場所や時間によって香港版サイトへ接続できない場合もある」と報じている。

これらの情報から、中国政府は3月末頃 “google.cn”をブロックしたものと思われる。日本では現在でも、“google.cn”は香港サイトにリダイレクトされるが、中国本土ではもはやこのリダイレクトは意味がなくなってしまったようだ。

過去の実態を見ても、中国本土内でのブロックの状況は、場所と時期によってずいぶんバラツキがあるようだ。グーグルは “Mainland China service availability” というウェブページに、各サービスの日々の使用可否の状況を掲載している。これによると3月21日以降、連日ウェブ検索が「使用可」になっている。場所によっては使えたのかも知れないが、情報の精度をもっと上げる必要がある。

全世界のグーグルのサイトに対するアクセスは?

では、全世界に180ある “google.cn”以外のグーグルのサイトへの中国本土からのアクセスはどうなのだろうか? たとえ “google.cn”にアクセスできなくてもこれら外国のサイトへのアクセスができれば、それを使っていくらでも検索ができる。検索対象サイトを、中国語のサイトに絞ることもできるし、また “google.com”の場合は、検索ページの表示に中国語を使うこともできる。

ところが、これらの外国のサイトの中国本土からのアクセスの可否がはっきりしない。前出のWikipediaやブログ情報にも記載がないし、小生が目にした限り、ニュースでも報じられていないようだ。

これらのサイトへのアクセスが可能なら、実質上、中国本土からも自由に検索ができるので、この情報も是非調査して正確に報道してもらいたいものだ。これは外国からインターネットで調査することはできないが、中国各地に特派員を派遣している大きな報道機関にとっては容易に調べられることだ。

自主検閲か、政府によるブロックか?

検索サイト自身がブロックされていて使えないものを別にして、検索できない原因には二通りある。

一つは、検索結果のページに検索対象のページが表示されないものだ。前回のブログに記したように、中国のBaiduで “Tank Man”が検索できないのはこれだ。これは検索サイトの自主検閲による。

もう一つは、検索結果のページには検索されたサイトが表示されるが、それをクリックしてもそのサイトが表示されないものだ。そのサイトが政府機関によってブロックされている場合はこうなる。

ところが、記事を読んだだけでは上記のいずれなのかはっきりしないものが多い。

例えば、前出の4月1日の日経新聞の記事には、「無事に香港版のサービス画面にたどり着いても、中国政府の神経を逆なでするような単語を入力して検索すると『閲覧できません』との結果が表示されるケースが多い」とある。『閲覧できません』と表示するのが検索サイトなのか、検索結果をクリックした後のブラウザなのか不明だ。香港版は自主検閲はしてないはずなので、これは検索されたサイトを中国本土でブロックしているためだと推測されるが、記事だけからはどちらが原因か不明だ。

あまり頭を使わなくても、何が起きているのかはっきり分かるように書いてもらいたいものだ。

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