2016年10月29日土曜日

やっと日本でもビットコインの扱いが明確に!?

 
ビットコインが消費税非課税に!

2016年10月12日の日経新聞によると、財務省と金融庁はビットコインの売買に消費税を課税しない方向で調整に入ったという。年末の自民党の税制調査会で正式に決定するそうだ(1)。

税制上、ビットコインを含めた仮想通貨を「モノ」とみなすか「通貨」の一種とみなすかが世界中で議論されてきたが、日本政府は従来「モノ」とみなしてきた。そのため、明文化されていたわけではないが、その売買には消費税が課税されるというのが、税理士などの一般的な見解だった。

しかし、仮想通貨はもともと現在の通貨の代替え手段として考案されたものなので、 これを「モノ」とみなすのには無理があることを、小生は前から指摘していた(2)。その後、諸外国では「通貨」としての扱いが広がり、上記記事によると、現在G7でビットコインに消費税を課しているのは日本だけということだ。

金融国際化の時代に、日本だけ別の道を歩むことはデメリットが大きい。そういう意味で、今回の政府の方向転換は好ましいことだ。しかし、日本はどうしてこんなに時間がかかってしまったのだろうか? 日本の問題を前にも指摘したが、再度振り返ってみよう(2)。
  
トップの認識の差

日本が諸外国に対して法的整備が遅れた原因の一つは、金融・財政のトップの認識の差にあると思う。

前にも指摘したように、2013年に、当時の米国のFRBのバーナンキ議長は、「仮想通貨は将来、迅速で、安全で、効率のよい決済手段を提供するようになる可能性がある」と述べ(2)。

一方、日本では2014年初めにビットコインの取扱機関であるマウント・ゴックスが破綻した際、麻生太郎財務相・金融相は、「こんなものは長く続かないと思っていた。どこかで破綻すると思っていた」と述べた(3)。

また同氏は、2016年2月5日の衆議院予算委員会で、秋元司議員の「日本だけが今、仮想通貨の交換に対して消費税がかかっている。・・・そろそろ日本も世界の潮流に合わせて消費税をかけない、非課税にする、この措置はいかがなものでしょうか」という質問に対して、「まだ日本だけがということではない・・・(安全面などの)点も十分に勘案したで必要な環境整備を進めてまいりたいと考えております」と答弁している。具体的方向性については何も触れてない(4)。

欧米では、トップが方向を示し、それに従って下が動く。それに対し、日本のトップは、調整役としては秀でているかもしれないが、明日の社会について明確なビジョンを持っている人は少ないようだ。ビジョンがなければ、君臨はできても、自ら社会を変えていくのは難しい。
  
まだ鎖国中?
 
日本が遅れたもう一つの原因は、日本の金融・財政関係者がビットコインについての諸外国の動きを把握してないように思われることである。

2014年3月5日の日経新聞の1面に、「政府が取引ルールを示すのは主要国で(日本が)初めて」とあったのであきれたことがある。確かに当時はまだ各国政府とも試行錯誤中で、国によりまちまちだったが、2013年頃から次々と方針を打ち出していた。この記事の情報を流した人も書いた人もこういう状況を知らなかったのだろうか(5)?

こういう鎖国時代のような状況では、激変する世界にまともな対応ができるわけがない。
  
キャピタルゲインの扱い等も明確化要 

今回の記事が取り上げているのは消費税だけだ。しかし、税制上の明確化が必要なのは、仮想通貨のキャピタルゲインに対する課税などもある。 

仮想通貨を安心して取引に使えるように、税制全般にわたる扱いを明確にする必要がある。

[関連記事]

(1) 「ビットコイン 通貨と同じ位置づけに」、日本経済新聞、2016年10月12日
(2) 酒井 寿紀、「続:成るか、ビットコインによる通貨革命?」、OHM、2014年5月号、オーム社 
(3) 「ビットコイン破綻すると思っていた』」、朝日新聞、2014年2月28日夕刊
(4) 「第190回国会 予算委員会会議録 第8号、衆議院、2016年2月5日
(5) 「仮想通貨に取引指針」、日本経済新聞、2014年3月5日  

 

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