2015年2月23日月曜日

Windows 10の企業向け提供方法は?


Windows 10の個人向け提供方法とその問題点を「Windows 10の無料化にご用心!」(15/1/28)に記した。では、マイクロソフトは企業向けにはどういう提供方法を考えているのだろうか?

"Long Term Servicing branches"は従来と同じ?

上記のブログに記したように、個人向けには、セキュリティの改善やバグの修正だけでなく、機能の追加も今後は無料で随時行うという。緊急なもの以外は、従来通り月1回のペースになるようだ。

しかし、近年Windowsは、銀行の勘定系システム、交通の管制センター、工場のオンライン管理などの、いわゆるミッション・クリティカルな業務にも使われている。これらの業務にWindowsを使っている企業は、Windowsの機能に追加・変更があれば、アプリケーションソフトに悪影響がないか、入念に確認する必要がある。

そのため、Windowsの機能に毎月のように追加・変更があると、その確認作業に追われることになる。

一方、これらのミッション・クリティカルなシステムでは、いったんシステムが稼働に入れば、一般的にOSの新機能は不要である。

マイクロソフトはこういう企業のニーズに対して、"Long Term Servicing branches"という提供方法を用意している。これは、セキュリティの改善やバグの修正のみを随時行い、機能の追加・改善は原則として次のバージョンまで行わないものだ(2)。

マイクロソフトはこれに"Long Term Servicing branches"というものものしい名前を付けているが、その実態は従来の提供方法とほとんど変わらないものと思われる。

そして、これは企業のミッション・クリティカルなシステム向けと称しているが、企業のミッション・クリティカルではないシステムや個人ユーザーの中にも、こういう従来からの提供方法を望む人がかなりいると思われる。

というには、アプリケーションソフトがOSの機能の追加・変更で問題を起こすことが過去にしばしばあったからだ。

"Current branch for Business"は折衷案

企業によっては、OSの機能が毎月のように追加・変更になるのは避けたいが、他方、次のバージョンまで待たずにOSの新機能を取り込んで、他社との競争に後れを取らないようにしたいと考えるところもあるだろう。

マイクロソフトはこういうシステム向けに、個人向けに毎月のようにリリースされるOSの新機能を、4か月分ほどまとめて年に3回程度提供する"Current branch for Business"という提供方法を用意するという(2),(3),(4)。これは、個人向けの提供方法と、"Long Term Servicing branches"の折衷案だ。

この提供方法を利用すれば、個人向けのリリースである程度安定動作が確認済みの機能を使うことになる。逆に言えば、個人向けの毎月のリリースは、"Current branch for Business"のための安定動作確認のモルモットになるわけだ。

従来バージョンアップの時にしか行われなかった機能の追加が、Windows 10以降毎月のように行われるようになれば、リリース前の品質確認がおろそかになる恐れがある。十分に「枯れて」ないOSが次々と出回る可能性がある。

今後の企業ユーザーの課題は?

一つの企業で、システムごとに"Long Term Servicing branches"と"Current branch for Business"とを使い分けることができ、また、同じシステムについての提供方法を必要に応じて切り替えることもできるという(2)。

そのため、今後自社システムの安定的稼働を望む企業は、OSの機能の追加・変更の内容をよく調査し、これら二つの提供方法を適宜使い分けて、真に必要な追加・変更のみを自社システムに適用する必要がある。

[関連記事]

(1) "Windows 10: An Exciting New Chapter",
   (マイクロソフトのプログラム・マネジメントのディレクタJim Alkoveのブログ)
(2) "Windows 10 for Enterprise: More secure and up to date",
   (同上) 
(3) "Microsoft to business: Don't worry about Windows 10, consumers will test it",
(4) "Microsoft talks up Windows 10 for business, but questions mount",